ファシリテーションミニ知識

ファシリテーションをみんなのチカラとしてもらうために。ファシリテーションを学んだことのある方は復習になるように。これからファシリテーションを学びたい方にはその入口になればうれしいです。私がビーネイチャースクールで学んだこと、お教えしていたことを中心にまとめています。

出典・参考文献
『ワークショップ ー新しい学びと創造の場ー』中野民夫著
『ファシリテーション革命 ー参加型の場づくりの技法ー』中野民夫著

『ファシリテーション ー実践から学ぶスキルとこころー』中野民夫・森雅浩・鈴木まり子・冨岡武・大枝奈美 共著

『ファシリテーション』は、参加型の場づくりの技法です。人が集い、話したり考えたり学んだりする場に広く役に立ちます。元々の言葉の意味は『〇〇が△△するのを容易にすること』です。話し合いや会議だけでなく、人が集い話したり聞いたり考えたり学んだりする時に、よりやりやすくするための方法です。『ファシリテーター』は、やりやすくする人。参加者がやりやすくなるように手伝う役目です。あくまでも参加者が主役です。

3つの要素

参加型の場の特徴は次の三つです。『参加』『体験』『相互作用』。この三つが揃うと参加型の場の意義が最大になります。
『参加』とは、目的を持って集まりに加わり行動を共にすること。参加の仕方は人それぞれさまざまです。消極的に見えても深く考えているかもしれません。積極的に見えても自説を述べているだけで人の言うことを聞いていないかもしれません。一人一人の参加の仕方を大切にしましょう。
『体験』とは、実際に自分の身を持って行動し感じること。五感をフル活用して、気持ちを感じて。自分の事をしっかり感じるとともに、その場にいる皆の様子も感じられると体験も何倍にもなります。
『相互作用』とは、互いに働きかけ、影響を及ぼしあうこと。相互作用が起きることで、参加者の総和を超えた力が生まれ、一人一人がその場に欠かせない存在となります。
『参加』『体験』はイメージしやすいと思いますが、忘れてはならないのが『相互作用』です。相互作用が起きているか、参加者が相互作用を感じられているかを、注意深く観察しましょう。

最大意義

参加型の三大特徴が揃うと、参加者の『当事者意識』が高まります。誰かに決められたりやらされることはしょせん他人事で中々身になりません。しかし、自分で考えたこと、自分の意見が決定に影響を与えたことは『自分事(自分たち事)』と感じ、主体的に積極的に取り組めるようになります。

ファシリテーターとして、いつも心にとどめたいこと、大切にしたいことは、何度も確認しておきましょう。

ファシリテーションは方法の一つ

コミュニケーションの方法にはいろいろあります。ファシリテーションはそのうちの一つで、全ての場面で問題を解決する魔法ではありません。参加者を主体的にし、当事者意識を高めていく双方向の手法です。特性を理解し、ふさわしい場所で効果的に活用していきましょう。

コンテンツとプロセスを意識する

ファシリテーターができるのは、やり方を提案することです。何を話し何を決めるのか(コンテンツ)と、どのようなやり方をするのか(プロセス)を混同しないように気をつけます。コンテンツとは、話し合いの話題、そこで何が話されるのか、何を決めるのか、といった内容です。プロセスとはそのやり方です。やり方により参加者の様子も変わります。その変化にも注目しましょう。

プロセスを手放さない

やり方がその話題やメンバーに合っているのか、今どんな様子なのか注目しましょう。うまく進んでいない、雰囲気が悪くなっているのは、やり方が合っていないからかもしれません。用意した通りにこなすことにこだわらず、もっとよいやり方がないか考えて、再提案したほうがよいときもあります。
ファシリテーター役の人が話の内容にも関わる立場の場合も多くあるでしょう。その時には、二つの役割を担っていることを自覚しなければなりません。ファシリテーターとしてプロセスを握っていることとは別に、意見がある場合は参加者の目線に立って発言するように、気をつけます。立ち位置も一歩変えるくらいの方が見え方も変わるので、おすすめです。
話に夢中になって、やり方や様子を見ることがおろそかにならないよう、決してプロセスを手放さないようにしましょう。

参加者が主役

場の主役は参加者です。ファシリテーターはそのお手伝い役。何を選ぶのか、次に取る行動は何か、参加者が責任を持って決めなければなりません。その決定によって利益を得るのも不利益を被るのも参加者自身なのです。ファシリテーターは、参加者にそのチカラがあると信じ、励ましましょう。参加者たちの力だけでドンドン先に進めるようになったなら、ファシリテーターは忘れられるくらいがよいのかもしれません。 主役は参加者といっても、ファシリテーターの影響力は大きいものです。前に立って全員に声をかけていけば、どうしてもその場をリードしているように見えます。そのことを自覚して忘れないで。ファシリテーターはあくまでやり方の提案をする者です。参加者の力で出来るよう準備して任せていきましょう。自分たちの力で出来た、と思えればさらにドンドン進み始めます。

信頼を得る

ファシリテーターが参加者に信頼されて初めて場の安心が作られます。言ってる事とやってる事が違うようでは信頼されません。「誰でもよいので」と言ったのに指名したりしていませんか?細かなところの不一致にも気ををつけましょう。 どんなに丁寧に周到に準備をしても、ファシリテーターが戸惑ったり間違ったりする事もあるでしょう。そんな時には無理せず正直に。ファシリテーターが「緊張してます」と言う事で場が和むこともあります。間違ったらそのまま無理に通そうとせず、謝ってやり直した方が信頼されます。

焦らず諦めず一歩ずつ

ファシリテーションは話し合いを参加型にする方法です。最初から全てが解決するとは限りません。出来ることに取り組んで、ちょっとでも良くなれば儲けもの。めげず諦めず少しずつ、活用してくださいね。